About

原野上は一つの空間であり、空間や空間性をお届けする場所でもあります。

空間とは、何かをおいておく場所です。原野上の空間が、大地のような広がりと優しさを持ち、常に余裕を感じさせるものとなるよう願っております。私たちは一体としての空間が持つ美を作り上げ、室内・室外問わず、暮らしの息遣いを感じさせる場所から、公共空間、自然の空間、芸術に現れる限りない心の空間、そしてすべてを捨象した抽象的な空間までも、届けてまいります。古⺠家、庭園、そしてギャラリーでもある原野上は、作家の作品を際立たせると同時に、展示そのものを空間芸術の一つとしてお届けしたいと考えております。

「素足で田んぼを走り回ったときのぬくもり」。暮らしや芸術のなかで、私が探し求めているのは、もっとも丈夫な物質 や大地との根源的なつながり、そして無邪気で広々とした空間です。こうしたものは、芸術と暮らしの途絶えることのな い自然のつながりをも構成しています。「原野上」、百年前から⺠家だったこの建物を目にしたとき、大地を踏みしめたときのぬくもりと安心感が浮かんできました。 手を加えられるところが少ない——それがいいのです。大きく改築できない木の構造、床板、廊下、陽の光が掃き出し窓から室内に注ぐとき、空気中に漂う光は、どこか時間の痕跡のように見えます。

具象的な場所は必要ですが、いわゆる「ギャラリー」のような特別な空間にはしません。日々の「暮らし」のなかで育ま れた息遣いと風貌を残しながら、芸術が持つエネルギーと生気を加えていく。そうすることで、暮らしに芸術を溶け込ませるという「原野上」の願いを叶えられればと思っています。